相続税コラム

住宅取得資金贈与の失敗事例

皆さんも一度は聞いたことがあると思われる、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税についてのお話です。
相続税対策として生前贈与は一般的ですが、通常の暦年贈与の基礎控除110万円や相続時精算課税の特別控除2,500万円に加えて非課税枠(※平成30年は省エネ等住宅1,200万円、それ以外700万円)を利用できることから、お子さんやお孫さんの住宅を新築・購入する際はこの制度の利用を検討することが多いと思われます。
上手に利用できれば相続税対策としても大きな効果があるこの制度ですが、安易な気持ちで利用しようとして要件を満たさず、結果として莫大な贈与税が課せられるケースもあります。以下に、住宅取得資金贈与の非課税制度に関するよくある失敗例のうち一部を挙げます。

 ① 娘夫婦の自宅(土地+建物)を購入。土地は父からの資金贈与により娘が購入、建物は娘の夫名義でローンを組んで新築。
  → 娘は土地のみ購入のため非課税の対象外。要件を満たさず贈与税が課税される。

 ② 非課税限度額(1,200万円)の贈与を受けたが100万円は不動産取得税の納税に充てた。
  → 不動産取得税等の諸費用は住宅取得ではないため100万円は非課税の対象外。

 ③ 非課税限度額(1,200万円)の贈与を受けたが100万円は外構工事費用に充てた。
  → 外構工事は住宅取得ではないため100万円は非課税の対象外。

 ④ 「請負契約による新築・増改築」と「売買契約による取得」の要件を混同し、「売買契約による取得」の際に贈与の翌年3月15日を過ぎても引渡しを受けていない。
  →「売買契約による取得」の場合は贈与の翌年3月15日までに引渡しを受けなければならない。「請負契約による新築・増改築」は翌年3月15日までに屋根を有し土地に定着していれば可。

これらのケースでは、せっかく非課税制度を利用しようとして住宅取得資金の贈与を受けても、要件を満たさず贈与税を課せられることになります。またこの非課税制度には、ここに記載のこと以外にも面積や時期、贈与者・受贈者に関するもの等多くの要件があり、一つでも満たさないと非課税ではなくなる恐れがあります。住宅取得資金の贈与を検討中の方は、安易に本制度を利用できるものと思わずに、請負契約や売買契約を行う前にいちど本制度に精通した税理士に相談されることをお勧めします。

※本記事は平成30年1月時点の税制をもとに執筆しています。非課税限度額や適用要件等、もしくは制度の存続自体が執筆時点と異なる場合がありますので住宅取得資金贈与の非課税を利用する場合は必ず税理士や税務署へご確認ください。

参考:国税庁ホームページ 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

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子がマイホームを建てると相続税が高額となるケース- 相続税コラム|塚本誠太郎税理士事務所