相続税コラム

子がマイホームを建てると相続税が高額となるケース

 静岡で相続税の対象となる方の多くを占めると思われる、市街化区域の農家さん等のご自宅のお話です。農家さん等であれば、そのご自宅の敷地は一般的な家庭と比べて広いことが多いと思います。それだけ広い敷地だと母屋のとなりに息子さんや娘さんがご自分で自宅を建てるケースも多いと考えられます。実はこの方法、相続税節税の観点からすると、ちょっと損するケースもあるのです。

 相続税の規定の中には 「小規模宅地等の特例」 があります。 これは、 相続財産の中で亡くなった方(被相続人)が自宅として使っていた宅地のような特定の土地の評価は、通常の評価額より大幅に減額できるという特例です。 例えば自宅で特定居住用資産としてこの特例が適用できれば330㎡までの範囲で80%減額されます。  ただし被相続人の自宅であれば無条件に相続税評価額を大幅に減額できるのではありません。 その土地を相続する相続人の種類によって適用可否の判定が行われ、例えば  ①配偶者  ②同居親族  ③持ち家のない相続人  のいずれかに該当し他の細かい要件をクリアすれば適用可となります。 このために「誰がどの財産を相続するかによって相続税額が変わる」ことになります。

 では、冒頭の同じ敷地内の別棟に独立して住んでいる息子さんや娘さんはどうでしょうか?

 実は同じ敷地内でも別棟で独立した生活をしていれば②の同居親族に該当せず、その別棟の建設費をお子さんが自分で払っていれば③の持ち家のない相続人にも該当しないことになり、小規模宅地等の評価特例を適用できない可能性が高くなります。また二世帯住宅である場合に同居とみなすかどうかや、同居でなくても被相続人と生計一の場合にも個別に要件が設けられているので細かく確認する必要があります。

 このように小規模宅地等の特例は適用するための要件が大変複雑で一つ一つの要件を慎重に確認して適用可否の判断をする必要がありますが、平成30年度税制改正で更に要件が加えられ、これまでよりもさらに複雑で適用に慎重さが求められるものとなりました。それでも上手く適用できれば前述の通り大幅な節税が期待できるものであり、ここで取り上げた自宅敷地等の「330㎡まで80%減」以外にも、事業用宅地に使える「400㎡まで80%減」や、アパート等に使える「200㎡まで50%減」といったさまざまなバリエーションもあり、これらの組み合わせ方やどの土地で適用するかによっても税額に差が生じる可能性があります。

 いずれにしても本特例は前述の通り適用可否の判断が複雑で税額への影響も大きくなりますので、気になる方は本特例に精通した税理士に相談することをお勧めします。

 

参考:国税庁ホームページ No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

※本記事は令和2年6月現在の税制に基づき執筆しています。今後の税制改正により記事の内容が最新の税制と相違することがありますので、実際に小規模宅地の評価特例の適用可否を判断する際は必ず税理士にご確認ください

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住宅取得資金贈与の失敗事例 - 相続税コラム|塚本誠太郎税理士事務所